□今日の理事長 #005「役員の引き継ぎ」

今日は、築50年近いマンションの理事会だった。今期3回目の理事会だが、相変わらず出席率は芳しくない。毎回のように欠席者が出る中、今日の議題は「来期の役員選出をどうするか」という、この管理組合最大の頭痛の種だった。

輪番制を敷いているものの、順番のルールが曖昧で、やりたくない人は選ばれても理事会を完全無視して一年中欠席し続ける。今回の理事長もまさにその一人で、開口一番こう言い放った。

「私は何も決めたくない。早く来期の理事会に引き継ぎたい。今期はクジで理事長になってしまったんだから……」

責任を負いたくない理事長の本音が飛び出すと、会場の空気は一気に重くなった。そこから始まった来期の役員選出をめぐる議論は、不穏な空気を孕んで泥沼化していった。

紛糾する理事会と責任論の押し付け合い

高齢の理事が、疲れた表情でポツリと呟いた。

「私はもう高齢だし、体力的に二度と役員なんてやりたくないよ……」

すると、別の理事がすかさず声を荒らげる。

「いや、マンションの管理は住民が責任を持ってやるべきだ!」

正論といえば正論だが、それを聞いたもう一人の理事が冷めた目で反論する。

「『責任を持ってやるべきだ』とご立派な意見をお持ちなんだったら、あなたが率先して来期もやればいいじゃないですか。」

その瞬間、議論はピタリと止まり、冷ややかな沈黙が流れた。誰もが自分の順番が回ってくるのを恐れ、他人に押し付け合うばかりで、建設的な話には一切進まない。フロントとしてこの場をまとめるのは骨が折れるが、こうした人間模様の裏側を覗き見るのも、この仕事の妙味ではある。

最終着地点としてのいつもどおりの「全戸アンケート」

このままでは埒が明かないと判断した理事長が、力なく溜息をついて提案した。

「組合員全員にアンケートを配って、来期の役員選出方法について意見を募ろう。その結果で判断しよう」

こうして、来期の役員体制の決定は、理事会内での話し合いから、組合員全体へのアンケート結果へと丸投げされる形で決着した。いつもどおり、ほぼ返却あるわけないが。

築50年という老朽化の波に加え、管理を担う「人」の高齢化と無関心。ハードの寿命とソフトの限界が同時に押し寄せるこのマンションで。

来年も役員よろしくお願いします。

アンケートはほぼ意味ないよ。<KAD
□運営者プロフィール
KADO|現役マンション管理フロント

✔ 管理業務主任者(実務者)
✔ 宅地建物取引士(売却領域)
✔ 第二種電気工事士(設備修繕)
✔ 一級建築士挑戦中(構造専門)
✔ 年間約30回理事会参加

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